> Linearized Baculovirus DNAはそれ単独では遺伝子の欠落が致死的でありウイルスは産生されず、transfer vector DNAをco-transfectした時にだけ、ウイルスが産生されますよね。
> で、使用するinsertの入ったtransfer vectorはcloningしてありますので、結局co-transfectした結果産生されるウイルスはそのためクローンではないのでしょうか?
原理的にはその通りです。Bac-N-Blue システムでも線状化したウイルスゲノムを組み換え相手に用いて、線状化の際に必須遺伝子の一部が除かれるため、トランスファーベクターと組み換えを起こしたときだけウイルスが増えてくることになっています。そして、このシステムの場合は lacZ が組み込んであって、正しく組み替えを起こしたウイルスのプラークは X-Gal で染まります。
ところが実際にやってみると、結構白いプラーク、すなわちウイルスはできているけれども lacZ 遺伝子は潰れている、というものが出てきます。何が起きているかそれ以上解析はしていませんが、一部欠失したトランスファーベクターが組み込まれて、必須遺伝子は復活したが lacZ はなくなってしまったのだろうと推測しています。Bac-N-Blue のマニュアルによれば 90% 以上が正しい組み換えウイルスだそうですが、標準プロトコールではプラークアッセイで精製する事になっています。
というわけで、単に線状ゲノムとトランスファーベクターを Sf9 に transfect した上清には、予想と異なるウイルスが一定割合含まれていると予想されます。それで問題ないような実験なら結構ですが、そういった短いウイルスは一般に長いインサートを持つウイルスより増えやすいので、増幅を重ねるたびに力価が低下するなどの可能性も常に念頭に置いておく必要があるでしょう。
Bac-to-Bac の場合は、Homologous recombination ではなくてトランスポゾン配列を用いた site-specific recombination なので、そういった非特異的な組み換えが起きる可能性もより低くなっていると思われます。 |
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