薬剤や紫外線刺激によって繊維芽細胞に誘導された炎症応答を、何らかの薬剤(化合物)を添加することによって緩和しうるか否かを評価する、という実験ですから、要するに(効果があるか明らかでない)何らかの阻害剤を用いて細胞応答を抑制する実験と原理的に同じですよね。
このような特異的阻害剤処理による抑制実験を行う際の最も基本的な問題は、その阻害剤処理による非特異的効果の問題です。
非特異的な作用を大別すると、
(イ)非特異的効果ではないか?
阻害剤の本来の標的ではない系に非特異的に作用した結果、
炎症応答が減少するような場合です。
→見かけ上、抑制効果があるように観察されます
(ロ)非特異的(あるいは特異的)作用の結果、細胞が死んでしまっていないか?
阻害剤がどこにどのように作用したかは解らなくても、
ともかく結果として細胞が生存できなくなってしまった場合です。
→死ねば当然サイトカイン産生などの応答は減少して、
見かけ上、抑制効果があるように観察されます
薬剤処理によって、実験系がワークしないほどに細胞が大きく傷害されてしまっていては、対象となる薬剤に効果があってもなくても評価できないわけですから、細胞が損傷してしまっていないか否かを検証しておくことは、結果を正しく評価する上で当然必要な情報になります。
阻害剤による抑制効果があるか否かは、少なくとも上記の二つの基準をクリアしていなければ正しい判断ができません。
某学会における質問者の質問の意図は、(ロ)に関するものですから、正統な質問といえます。
そもそも、その薬剤を投与することによって炎症応答は緩和されたけど、それは宿主の細胞が死んだ結果だった、のでは、まったく実用に堪えないですよね。。。 |
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