極めて多種類の蛋白質を含む生物材料から、特定の蛋白質を高い純度で取り出すことを精製といいます。細胞や組織から特定の蛋白質を精製するのはけっして簡単なことではなく、特に存在量の少ないものや不安定なもを生物活性を保持したまま一定量得ようとすると、精製だけで修士課程が終わってしまうくらい苦労することもあります。そこで実験に差し支えなければ、自分の欲しい蛋白質がわかっていればそれをコードする遺伝子を大腸菌や培養細胞に導入して大量に発現させて、そこから精製してくるということがしばしば行われます。このとき簡単に精製するため、導入する遺伝子の配列を工夫して、その蛋白質のNまたはC末端に何残基〜何十残基のアミノ酸からなる余分な部分を作ることがあります(質問のなかの融合蛋白質というものに相当するとおもいます)。この部分をタグ(正しくはアフィニティータグ)と呼んでいます。(タグはラボスラングのような言葉なので、この言葉だけで調べても納得いく説明は見つからないでしょう。アフニティータグとGSTとグルタチオンで検索してみて下さい)このtag部分はいろいろなものが使われていてHistidine6個または9個からなるHis-tag、GST-tag, Myc-tag, Ha-tagなどがよく使われます。いずれにせよtagは特異的に結合する相手がすでにわかっているものが使われます。たとえば His-tagならばニッケルやコバルト、GSTならばグルタチオンなどで、MycやHAならばその特異抗体が使われる事が使われます。この親和性を利用すれば、tag-付き蛋白質をtagを頼りに捕まえてくる事が出来るので、精製が格段に容易になるのです。精製後にtagが邪魔ならば、タグと自分の欲しい蛋白質の間にプロテアーゼ認識配列が入るような設計にすれば、プロテアーゼで切り離すことも出来ます。
GSTはよく使われるtagのひとつで、グルタチオンと親和性があるので、GSTをつけた蛋白質はグルタチオンを結合させた担体に結合します。きょう雑蛋白質をよく洗って除いてからグルタチオンを溶液くわえることでGSTー蛋白質は担体からはずれて溶出されてきます。」
ただ実際にはtag を使って精製しても依然としてきょう雑蛋白質が多く残っていたり(たとえばHis-tag)、tagを付加したことが原因で不溶化したり活性が影響受けたりすることもしばしばあるので、tag-を使う方法が通常のオーソドックスな精製よりつねに優れているとはいいきれません。tagを利用した精製をの精製度を高めるために,2種類の異なるタグを並べるタンデムアフィにティータグ(TAP-tag)という方法も最近利用されています。 |
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