> 脾臓バラバラにして溶血なしで即効Annexin染色してもB細胞は半分くらい死んでませんか?同じサンプルでT細胞は5-10%しか死んでませんが。
みさん実にgood point!です。いままで脾細胞調製とかRBC lysisの話が出たときに、書きたいと思いつつ、絶対反論が出てきて水掛け論になるかもと思って言い出せませんでした。(すこしみさんの話と違っていきますが・・・)
一応先言い訳的に私のバックグラウンド。私はかなり長年免疫の分野で生きています。ラボもかなり渡り歩いています。どこでも脾細胞の調製は日常です。脾臓のつぶし方はラボによりそれぞれなので、えてして手技の問題にされたりしますが、どうやろうと脾臓を崩したところで死細胞は全体の1/4〜1/3くらいになっているのです(まったく遠心なしで。したら死細胞は凝集するので)。なかなかこの事実を信じてもらえないのが実情です。
そして、遠心してRBC lysis bufferを加えて、5分(時間は人それぞれ)おいた後、メディウムを加えてストップをかけ、遠心すると、すごい細胞クランプ(=死細胞の残骸)。ここで、みな、RBC lysisが細胞を殺していると解釈してしまうわけです。しかし、ほとんどは元から死んでいた細胞が凝集しただけです。そして、ここで細胞をtrypan blueでみると90%以上生きてます。このとき初めての細胞カウント操作になるので、皆はじめからこれくらい生きていたと思ってしまっているのです。
この誤解により、lysisを45秒でとめるとか、lysisしたあと10% FBS血清いり培地を多量に加えるとかいう流儀ができてくるのですが、RBCD lysisほとんど影響ないと思います。現ラボのメジャーなやりかたは(アメリカなのでそんなに縛りがなく人それぞれですが)、脾臓をつぶすのはFBSなしの室温HANKS、ACK lysis bufferが5分、そしてメディウムを加えずにそのまま遠心6分で、しかも10本以上同時にやってますから、それなりの時間がかかってます。それでも、それで細胞が余分に死んでいるということはありません。
T細胞は死にやすいという表現をまま見かけます。たしかに刺激なしで培養すると一晩でかなり死んでしまいます(しかしこれもマウスに限る)ので、ある意味そうです。しかし、昨今の細分化されたT細胞の分離はマルチステップ(MACS -> sorter)ですることが多く、朝初めて夜撒き終わる終わるのも通常です。これだけながい時間、度重なる遠心、ソーターに耐えうる細胞を弱い細胞と呼ぶのは違和感をおぼえます。それもすべてRBC lysisのトリックからきていると思うのですが・・・
予想される反論を考えて付け足しておきたいことは、RBC lysisがまったく影響ないとは言いません。死なないまでも「ダメージをうけている」ということはあるでしょう。だからしないでいい方法があるなら私も避けます。例えば、MACSのT cell negative selection kitにはanti-Ter119抗体が入っており赤血球がのぞかれるので、これを使う場合はRBC lysisしません。
あとEDTAについても。0.1 mM EDTAが問題とは思いませんが、例えばSigma #7757 Red Blood Lysing BUfferにはEDTAが入っていません。ただのおまけ的成分だと思いますので気になるなら抜いてしまってもいいと思います。 |
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