遺伝子でも蛋白質でもそれらを直接細胞に振りかけただけでは、容易に細胞内に取り込まれることは期待できないと思います。トランスフェクション試薬や、既に紹介されているような蛋白質導入のための特別な試薬などが必要になりますし、それらを用いても、ものによってはなかなか効率よく導入出来ない場合も少なくありません。また導入された場合でも実験はその蛋白質が分解されていく前に行う必要がありますし、外から導入した蛋白質が生理的なものと同じコンパートメントに分布するかどうか、細胞内で活性を維持しているかどうかもチェックが必要でしょう。
化学的に合成した化合物の場合、疎水性が高いものは細胞膜を拡散で容易に通過していくでしょうが、荷電のあるようなものだと、なにか膜のトランスポーターをうまく使って積極的に取り込まれない限り、細胞内に取り込まれる可能性は低いでしょう。
化学的に合成した化合物としての阻害剤を細胞にかけて、効果を調べる実験はしばしば見受けられますが、特異性の問題はいつもつきまといます。意図する酵素なり蛋白質に作用してなんらかの結果が得られたとしても、その酵素だけに特異的に働いた結果なのかどうか分からないような気がします。創薬や有機化学の素養のあるひとだと構造式を確認して起こりうるいろいろな可能性を考える事が出来ますが、そうでない場合は-----特異的インヒビターという言葉には慎重になった方がいいような気がします。レビュアーがそうした事に注意を払っていない人ならば論文は通るかもしれませんが、その論文が結果を正しく解釈しているかどうかは別とおもいます。 |
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