横から失礼いたします。
千夏さんが提示なさった論文の場合、GFPの蛍光を測定しているようですが、
蛍光免疫染色法の場合は抗体反応などのステップが余分に必要になるので、
これらのステップの精度(手技のブレ)が鍵になると思います。
当方のラボには、蛍光免疫染色法とwestern blottingの比較を
された方がおります。
特殊な方法を用いて手技のブレ等を極力排除すると、western
blottingと同等程度の定量性を維持できるという結論が得られました。
しかし一般的な実験環境では手技のブレを排除することは困難でして、
免疫染色法による定量はあまりお勧めできません。
手技のブレ以外の難点としては、細胞間のばらつきが挙げられます。
たとえ(均質化した)培養細胞であっても、タンパク質の発現量は
細胞間で大きくばらつきます。
よって、「写真を2枚載せて否定量的に評価」とruruさんが
おっしゃるとおり、チャンピオンデータ的写真が何枚か得られても、
全体平均に関する定量性は議論できないことになります。
上記のような事情から、「免疫染色法は定量性のない手法である」と
一般に認識されているように(私自身は)感じておりますので、
定量性についての議論はなるべく避けて通るのが得策かと思います。
よって蛍光免疫染色法の定量性を議論するよりは、
蛍光2次抗体法やCan Get Signalなどを利用して感度を向上させた
Western blotにより定量するほうが簡単かと思います。
また、コントロールを取るのであれば、対象のタンパク質と
発現量が同程度で、かつ薬剤投与により変動しないタンパク質を
免疫染色法で同時に多重染色するのがよいかと思います。
(DAPI等では手技のブレやタンパク量のブレが反映されません。)
最後にもう1点だけ補足させていただきますと、蛍光免疫染色による
定量データがどの程度重要なのかを考慮されてはいかがでしょうか。
仮に、論文の主張を支持する主要なデータとなるならば、
定量性についての議論を避けて通れないでしょうけれども、
論文の主張を支持する副次的なデータであれば、
定量性についての議論は必要ないかもしれません。
長文失礼いたしました。 |
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