私の説ですが、
メンブレンを濡らすということは、メンブレンが持つ孔なり繊維の間隙なりを溶媒で満たすことだと言えます。乾いたメンブレンの孔は空気で満たされているので、これを溶媒で置換するわけです。
ところがPVDFは疎水性が強いために水はマトリックスからはじかれて、空気を追い出して置換するだけの浸透力がありません。メタノールのように両親媒性で表面張力の低い溶媒ならしみ込んで空気を置換することができます。一旦、メタノールで置換され空気が追い出されれば、液相対液相なので、水は拡散によってメタノールを置換することができます。
メンブレンマトリックスを満たしている空気を追いだしながら溶媒と置換していかないと、うまく濡れないというのはPVDFにかぎったことではなく、ナイロンでもニトロセルロースでも起こりえます。両面が同時につかるように、ざぶっといっきにメンブレンをバッファーに突っ込むと、両表面が気密性のたかい「濡れ紙」のようになり、中心部の空気が抜けられなくなっていつまでたっても芯にバッファーがしみ込まないという、PVDFの親水化に失敗したときとよく似た状態になります。これを防ぐには、メンブレンをバッファーに浮かすようにおき、バッファーが完全にしみこむまでちょっと置いてから沈めるといいです。 |
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