この辺りは私も良く泣かされましたし、今でもよく泣かされます。
もし精製しているタンパク質が元々可溶性のタンパク質なのであれば
おそらく各分子のリフォールディングが不完全で疎水的なパッチが
外に出ていて濃度が濃くなるにつれ疎水結合が起こり凝集、沈殿を
起こしているのだと思います。
もし精製しているタンパク質が疎水性の高い難溶性のタンパク質なので
あればリフォールドがうまくいっていたとしても元々水溶液中で凝集し
やすいのでしょう。
凝集を防ぐ具体的な方法ですがそれらの凝集を起こやすい部分を覆う
何らかのキャリアが必要かと思います。たとえばリフォールディングを
助ける添加物としてArgやGlyの様なアミノ酸、高濃度の塩、界面活性剤、
PEG、グリセリンなどを加えますがこのようなものを添加することに
よって凝集の割合が減少することもあります。私が以前リフォールドした
タンパク質ではいろいろ試して最終的にGlyでかなりの割合の凝集を
防ぐことが出来ました。この辺りはタンパク質によりますから一つ一つ
試してみるしかありません。それ以外にアドバイスしたいのは少し
考えてもらえればわかると思いますがリフォールドしたタンパク質に
限らずアミコンで濃縮を行なう限り当てはまるのですが濃縮している
サンプルはどうしても膜付近だけ局所的に非常に高濃度になってしまい
ます。たとえば全体では1mg/mLなのに膜付近だけは局所的に10mg/mL
になっているとかです。これによってタンパク質が沈殿してしまうこと
がよくあります。これを防ぐには遠心濃縮をこまめに止めて(たとえば
5分毎に)ピペットで攪拌し、全体の濃度を均一に保つことによって
凝集を減らすことができます。もちろん時間もかかりますし退屈ですが
少なくとも私の場合はこれが結構効きました。
あと上で書いた前者の様にリフォールドがまだうまくいっていないと
思われる場合、濃縮前のサンプルを4度で1週間ぐらいそのままにして
おくと(もちろん偶然ですが)時々リフォールドが良くなることが
あるようです。以前いたラボで「熟成」と呼んでいましたが本来の
フォールドからわずかにずれたフォールドを取っている分子が分子の
振動によってより正しいフォールドに移行するのではないかと想像して
います。 |
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