マウスであれヒトであれT細胞への遺伝子導入は通常のリボフェクションやエレクトロボレーションでは全く入りません。近年AmaxaがNucleofectionなる試薬とデバイスのセットを出していますが、これを使うと確かにカタログ通りの一過的遺伝子導入ができます。ただ、忘れてならないのは細胞が結構死ぬということ。あと、naive Tに入れるといっても、マニュアルに短時間の活性化刺激をいれてから使うように書いてあります。そうするとT細胞は増殖するわけで、プラスミドがどんどん薄まるのかあまり強制発現が長続きしないようです。また、よくも悪くもマニュアル通りの使い方をしないと入らず死ぬだけ、とフレキシブルさに欠けます。
レンチでのT細胞への遺伝子導入はかなりメジャーだと思います。ただ、レンチも原理的には静止期の細胞にも入るといっても、実際にT細胞に入れるにはTCR刺激をいれないとなかなか入らないようです。ご質問のレンチでどれくらいはいるかですが、レンチウイルスのタイターは用いるシステム(発現ベクター、コンポーネントベクターの構造、293T細胞の出所、トランスフェクションの仕方などなど)によって大幅に異なるので、一概にはなんとも。レンチの系はタイターを多少犠牲にしても安全性を考慮して発展してきたようで、あっちのシステム、こっちのシステム、いろいろ細かいところが違います。得られるタイターは使ってみるまでよくわかんないですねぇ。クロンテックのLenti-X HTシステムが一番高タイターが得られそうに思われますが、構造はワイルドタイプのエイズウイスルに近いので、日本ではそう簡単には使えません(BL3の認可が必要)。私としてもフォーラムの皆さんにどこのシステムがどのような特徴があり、どれくらい使い勝手がよいか教えてもらえればと思います。でも、実はレンチウイルスは遠心、あるいは専用のキットで濃縮できますので、手間さえ惜しまなければT細胞へほぼ100%近くにいけるはずです。ちなみに、レンチ発現ベクターのプロモーターとして、T細胞ではEF1a promoterがよく、CMV promoterはよくないという話があります。おすすめプロモーターもどなたかコメントしてくれますと勉強になります。 |
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