TGF-betaをテーマに扱って10年になるものです。
まず、経験論から。purified TGF-betaはほかの増殖因子・サイトカイン同様、ブロッキング剤入りの中性溶液(0.5% BSA-PBS,10% FBS-mediumなど)に溶解すれば、通常、容器への吸着ロスはみられません。TGF-betaは酸の中でも安定なので、データシートに書いてある通りにして安心を買ってもいいですが、HClをコントロールにも入れたりするのは面倒だし、なにより気持ち悪いですよね?
ちなみに、R&D Systems以外(WakoのもたぶんR&D Systemsのものですよね?溶解の仕方の和訳が微妙に変えられていますが・・・)のメーカーのTGF-betaのデータシートをみてみましたが、酸に溶かせとは特に書いてないです。
さて、次に私的な意見を。
精製・販売している会社に異論を唱えるのはちょっと責任は持てないのですが、それでも個人的には、R&S Systemsはなにか勘違いしているのかな?、と思っています。容器にべたべたくっついて問題になるのは(active TGF-betaではなく)latent TGF-beta(active TGF-betaとLAPの複合体)です。recombinantであれplatelet-derivedであれ、active TGF-betaはlatent TGF-betaの状態から精製してきます。ですから、精製過程でロスが問題になったことがあると推測できます。また、latent TGF-betaからactive TGF-betaを解離させるのに、acid treatmentをしているのではないかと思います。いったんactive TGF-betaをfreeにしてしまえば、極端な吸着ロスはなくなるでしょう。このあたりがごっちゃになり、精製後のactive TGF-betaも酸で溶解した方がいい理論になっているではないかと思ったりしています。 |
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