確かに、大手BDは1 million cellに対して何ugの抗体でとデータシートに書いていますが、これは全くの不適切な表現です。なぜならば、FASCS時の抗体必要量はほぼ濃度がすべてだからです。すなわち、いくつの細胞だろうが0.3 ug/30 ul, 1 ug/100 ul, 10 ug/1 mlで染めたものはほぼ同じ強度で染まります。これは決して抗体入れすぎているから見かけ同じになるというようなものではなく、saturation curveを描いても細胞数・volumeはほぼ関係なしに同じような濃度依存曲線となります。
ですので、10(6) cellsに対して0.125 ug/100 ulとデータシートに書いてあるあるから、10(8) cellsに対して12.5 ug/10 mlで染めました、ということがあればそれは愚の骨頂です。おそらく、抗体が細胞表面に結合して“消費”されてしまうとイメージしている方は多いと思いますが、すくなくとも細胞表面抗原に対し、サブugの抗体が10(6)〜10(7)細胞程度で使い切れる状況はまずありません。まあ、1細胞あたり何分子発現しているというのはなかなか言えないので、断言は避けますが。
ともかくも、このことからvolumeは減らせば減らすほど抗体の使用料を節約できるわけですが、細胞ペレットの大きさ、アスピレーションし切れなかった洗浄液の持ち込み容量、細胞のクランプのしやすさ等を考慮すると、おおむね、同濃度(タイトレーション済)の抗体溶液で、10(6)細胞未満:30-50 ul、10(7)細胞まで100 ul、10(8)まで200-1000 ulくらい、みたいな感じかと思います。
また、どのちみデータシートの推奨量はあてになりません。DCさんのいうように過剰量と考えて間違いないです。ですので、購入した抗体は自分でタイトレーションすべきだと思います。その時に、細胞数依存性、volume依存性も自身の手で調べてみるのがいいと思います。
あと、濃度を低した分染色時間を長くして元を取る、というのは間違いです。5〜10分で平衡に達したら染色強度はそれ以上はいくら待っても上がらないです。染色は15分くらいで十分だと思います。長くするよりは、大きい細胞は短時間でも沈んでいくので、途中ミキシングしてあげる方がよいと思います。こちらは気分の問題ですが。 |
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