抗体に限らず、製品である以上、lotによる善し悪しはある。たとえばポリクロなどだと抗血清の採取時期とか、免疫動物個体が違うとしばしば反応性とか特異性が変わってくることがるのは、多少なりとも免疫に経験のあるひとなら分かると思う。実験ノートには、抗体や特殊な試薬、キットについては必ずロット番号まで記録するのはそうした理由とおもう。不良品については実際、返品のうえロット交換に対応してくれることが多い。公開という話もみかけたけど、それはユーザー側としては時には役に立つことがあるかもしれない。けれども、買ったひとつの抗体がどうもうまく働かないとき、この会社のこの品番のこの抗体はよくないとか、さらに同じ抗体を使って意味のあるデータを出している他の人の論文は怪しいとかについて、当事者同士の間で議論するのはそれは自由だとおもう(特に抗体の特異性や抗原についての疑義など)けれど、当事者以外の人も自由に見聞きできてかつ匿名性の高い場所で批判することには適切でないのではないだろうか。なぜならば、会社も論文もほとんど信用のうえに成り立ってるものだから、批判された方の受けるダメージは時に計り知れないし、真の原因が批判とは別のところにあると判明したとしても、いちど生じたネガティブなイメージはそう容易には払拭できないから。ただ科学の進歩のためにはこれはどうしてもいま公開しておくべきと考えるなら正当な法的な手続きのもとで争う事柄とおもう。論文ならば、批判論文として発表して紙上討論できる。雑誌によってはコメンタリーとかレターとかオピニオンの項目をもうけてそうした議論(その雑誌あるいは関連領域の雑誌に載った論文にたいする疑問、質問、賛否いずれかの意見)の場所を提供しているものもある。 |
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