1.とりあえず現状を 改善のための対策。
サンプルのレーンの縦方向のノイズは不溶物です。コンタミがあったり、調べたい蛋白質がSDS sample buffer中で完全に可溶化できていないときに起きます。よってお話から察する限りでは、sample自体に原因があるトラブルと思います。SDS-sample bufferを新しく作り直してみて下さい。万全を期すならばできればグレードの高いSDSを新しく購入することを勧めます。できることならbetaMEも新調したほうがいいでしょう。あれもみんなで使っているとだんだん汚れてきます。開封されてから1年以上共通試薬棚にあるような古いSDSや古いsample bufferはゴミやほこり、ケラチンなどがコンタミしやすいのでこうした泳動パタンのトラブルの原因になりやすいです。BPBとbeta MEはストックのsample buffer に入れておくのではなくて、泳動する前にSDS-sampleに必要量だけ直接加えるようにしてみて下さい。泳動前に12000xg, 10min, 15~20Cくらいの条件で遠心して不溶物を除きましょう。上清をとるのに邪魔になるので、BPBはそのあと加えましょう。微細な不溶物は縦方向のノイズの原因になります。
もしSDS sampleをフリーザーに保存していたならば、泳動前によく溶かしましょう。低温でSDSがまだ析出している状態はノイズの原因になります。
余談ですが0.5M Tris-HCl (pH6.8)は長く室温で保存しているとカビが生えます。カビは弱酸性が大好きなのでちょうどいいらしいです。もしsample bufferを作る時にこうしたものを使うなら白い綿みたいなのが浮いてないか確認しましょう。
2. その他一応チェックした方がいい事。
アプライする蛋白質量について適正な量かどうかオーバーローディングではないか一応考えてみて下さい。適切な蛋白質量はwesternでは大切です。これは自分の見たいタンパク質によるので、いちど濃度を振ってどのくらいが適量かチェックしましょう。
SDS sample buffer中の蛋白質濃度が非常に高いとSDS化が不十分になりスメアになったり可溶化が不完全で冒頭に書いたような不溶物によるトラブルにつながります。思い当たるふしがあれば、少なくとも1mg/ml以下になるように、新たにSDSsample bufferを加えて希釈するなどしてみてください。
剪断不十分なDNAの混在(こういう状態のサンプルは粘性がある)は、粘性のため正確なアプライができずレーン間の蛋白質量がバラバラになったり、高分子量領域中心に泳動パタンの乱れや分離不良、部分的な転写不良などを招くことがあります。高濃度の非イオン性界面活性剤の存在はSDS化を妨害することがあります、また植物由来の材料などではSDS-PAGEを乱すような成分が含まれている場合があるようです。もし可能性があれば除去するような前処理を講じる必要があるかもしれません。 |
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