基本的に、細胞のリポフェクションの効率ってのは色々なステップがあるので必ずしも入りにくい細胞が同じ理由によって導入効率が悪いというわけではありません。
例えば、リポソーム試薬と細胞膜との物理的なコンタクトの頻度という意味では接着細胞のほうが浮遊細胞よりはるかに導入効率が良い理由の一つになります。また、細胞の中に取り込まれてからのDNA分解酵素の活性の違いや、免疫細胞にありがちなインターフェロン等の応答性の違いによってそれらの排除機構が変わります。
更に言えば、転写効率や細胞分裂速度や細胞周期のタイミングなど、その他毒性に対する耐性もありますし、同じoriginの細胞種であっても発現しやすい細胞としにくい集団ってのもあります(それらを考慮した293 LTVとかhigh titer cloneが売ってたりするし、バルクでGFPを発現させても検出しても導入の輝度にも大きく差があるでしょう。もちろん、発現される内在性のプロモーター活性などが過剰発現ベクターに関しては影響するのもその通りでしょう。
多くの場合、それらのパラメーターで相性が悪いのはマクロフェージや血球細胞などの免疫関連のものが多いです。逆に、増殖が比較的早くて古くから色々な実験に使われる細胞は細胞樹立やリポフェクション技術があまり研究されてなかった時代に経験則的に効率のいい細胞だから利用されてきたというだけのことで、特に意味はない”たまたま”の側面もあると思います。
個人的には、プラスミドなどの大きな日本差DNAを入れるよりもsiRNAなどを入れるほうが比較的細胞種を選ばずロバストな印象はあるので、プラスミドなどの大きなものが細胞に取り込まれて核まで入って(これも分裂期を経ないと核に行かない可能性がある)、発現するという工程はかなり過剰量のDNA(モル数)にさらされてやっとこさ一部が発現してる、ミクロの視点では結構大変なプロセスなんだと思います。 |
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