我々は遺伝子またはコードされる蛋白の情報がある範囲でしか系統樹を書けません。ですから、ウイルスの系統樹を書くとウイルスのみの系統樹になることが一般的かと思います。微生物やその他の生物との系統樹を描いたときに、なんらかのウイルスが十分測定可能な遺伝的距離に存在しうるかどうかは...現在の情報では分からない部分が大きいかもしれませんね。
しかし、内在性レトロウイルスのように明らかにウイルス由来のDNA配列が生物のゲノムに存在することはありますので、たとえば内在性レトロウイルスの系統樹を書くとか、内在性とそうでないレトロウイルスを合わせて系統樹を書くとか、そういったことは現実的に不可能ではないような気はいたします。特に前者の場合は、ウイルス由来DNA配列の系統樹を書くことで哺乳類の系統樹ができあがるというようなことにはなりますね。
"Constructing primate phylogenies from ancient retrovirus sequences"
https://www.pnas.org/content/96/18/10254
このように、ウイルスが遺伝子のベクターであるという性質を考慮すると、生命の起源(の少なくとも一部)はウイルスであった、という説ですら成立しうるのではないかと思います。調べたらそういう研究をしている研究者がみつかるのかもしれません。 |
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