少しおおさんの質問の意図とは異なるかもしれませんが、私自身、腫瘍と微小環境との間を連絡する分泌因子の研究をしている絡みで、少し思うところがあるのでコメントさせて頂きます。
目的としている遺伝子や蛋白質が、分泌蛋白など特殊な場合、細胞内蛋白質量はその細胞の蛋白産生をほとんど反映しません。例えば、腫瘍で産生された分泌蛋白が速やかに分泌され、その蛋白を産生する能力のない間質細胞に吸収されてしまう場合、mRNAレベルと相関するのは細胞内蛋白ではなく、in vitroの培養系の場合は、培養上清中に分泌された蛋白量になります。このようなin vitroでの所見をマウスモデルでのin vivo解析に展開しようとすると、どうしてもRNAレベルの解析が必要になります。実際、分泌蛋白の場合、免疫染色では細胞外蛋白が染まってしまいきれいな結果になりませんし、腫瘍と間質細胞を分離して蛋白を抽出する事が技術的に困難である場合も多々あります。この領域での近年の論文を見てみると、やはりqRT-PCRがin vivo解析の主体となっており、northern blotを見る機会はほとんどありません。
私自身、現在論文投稿準備中なのですが、分離細胞を用いたqRT-PCRと短期培養後の上清中蛋白定量が中心になります。マウスモデルなのでSNPについては危惧しませんが、splicing variantsの存在する可能性など気になりますので、cDNA全長でのRT-PCRをqRT-PCRと併用する形になりますが、RTの効率が細胞の種類(腫瘍と間質細胞)によって異なる、それも内因性コントロールでは見られず、特定の遺伝子特異的に見られる可能性については否定できず、投稿する上での気がかりになっています。残念ながら現在私が所属するラボではnorthern blotは完全に過去の技術となっており、私自身もうこの10年程northern blotをやってないという事もありますので、現在の形で投稿する事になると思いますが、reviewerに指摘された場合はシステムをセットアップする必要があると考えています。
論文投稿に当たりnorthernが必要かどうかは断言できませんが、科学的には、northernで確認できればその方がbetterである事は間違いないと思います。御参考になれば幸いです。 |
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