いくつか結果を整理して、何をOKとして何をアウトと考えて論文にまとめたいかによります。
基本的には、アーティファクトといっても
1. 質量分析のアサイメントの性質による偽陽性
2. Pulldownのプロセスで生じた非特異的結合またはノイズ
があるとおもいます。このうち1に関してはいわゆるDIAを行ってアサイメントした場合はFDRで偽陽性をひろうことになるので、個別の結合の信頼性は個別に(多くの場合別の技術的な手法で)確認して証明することが求められると思います。2.に関してはビーズやFc領域にベタベタと吸着する非特異的結合をたまたま拾ってきてる可能性もゼロではないのですが、ネガコンとの比較をしてれば一応問題ないと考えます(MSのデータの場合は定量性をどのように扱うかによっては0,100アプローチになる)。
↑いずれも個別でWBによるバリデーションはとってるので、これらの議論は当てはまらないとおもうので、生化学的にちゃんとした結合があるというのは一応言えると思います。そこまでで小さな論文クオリティの結論にはなります。
それ以降は、結合の意義をどう解釈するかなどにもよります。
リコンビナント同士での結合が見られない場合はin vitroでの直接的な結合がないことはわかりますが、それが第三者を介した結合だからなのか、リコンビナントタンパク質の翻訳後修飾の有無とか、こファクターが重要なのかはわかりませんね。要は、どういう結合を想定してて、何を目指すのかにもよると思いますけど、現在の方法で結合が見られるなら、293Tとかの細胞に無理やり発現させてみたり、deletion作ったりすることは一つの解析です。
一方で、リガンドレセプターの関係に意味を持たせるなら、遺伝学的なノックアウトノックダウンなどを利用してフェノタイプアッセイで検証してくという話にもなるでしょう。フルペーパーで大きな仕事をねらってるならいずれの観点も必要だと思いますけどね。
いずれのことを述べた上で、たくさんの結合遺伝子を扱った観点から言わせてもらうと、あるタンパク質に対する結合ってのは通常DIAで回収するとざっくりと数百ぐらいの候補は出てきます。その中でバリデーションが取れる分子が複数あったとして、その結合が全くの未知機能タンパク質同士の場合一番苦労するのはその結合の生物学的意義があるのかないのかを調べることだったりします。その意味でいうなら、細胞内で確かに結合はあるけど、それ自体に大きな意味はないかあっても非常に限定された状況での特殊な機能に関わるなんて話だとそれこそアーティファクトではないが、本質的に意味のある結合かどうかの議論は難しいですから違う候補分子を解析した方が良いなんてこともあります。
長々となりましたが、ようは、どういう結果からどういう結論を仮定を可能性として出すかですよ、研究なんてのは。 |
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