組成とpHの異なる濃縮ゲルと分離ゲルを重ねて行う電気泳動は分離効果を高めるのが目的のもので不連続緩衝系と呼ばれます。running buffer ,濃縮ゲル、分離ゲルそれぞれのpHとイオン強度の差異により濃縮効果をもたらします。ただこの方法が開発される以前は分離ゲルのみの同一組成、同一pHの連続緩衝液系の電気泳動が行われていました。なので分離ゲルがなくても分離能は劣りますが電気泳動自体は出来ます。
濃縮ゲルはウェル内のサンプル液の上端と下端を一旦同じスタートラインに並べた上で同時スタートさせるようなはたらきと考えて下さい。濃縮ゲルがない場合はウェル内のサンプル液の上端と下端でスタートラインが異なりますので、最後までこの幅は解消されずに分離されます。泳動中の拡散もあるので、さらに広がることもあるかもしれませんがすくなくとも縮まることはありません。なので何かの事情でやむを得ず分離ゲルなしで行う場合は、可能な限りサンプル容量を少なくすることが大切です。
また市販の既製グラジエントゲルは分離ゲルのないものもあると聞いていますが、優れた分離能を示すので、メカニズムはわかりませんが、少なくともグラジエントゲルならば、分離ゲルの有無は分離には事実上大きな影響は無いのかもしれません。 |
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