私も結晶屋なので聞いた範囲でしかお答えできませんが、電顕との違いはよく議論になりますので、わかる範囲で書きます。
電顕の2次元画像で分類できるのであれば、複数のコンフォメーションを捉えることはできます。最初のステップで電顕の画像をいくつかのパターンに分類するので、そのときに2種類混在しているなどの判断がつけば、分けて解析できます。
しかし、リガンドの結合状態などに関係なくフレキシブルなタンパク質では、電子顕微鏡でも解析は困難です。高分解能のデータを得るためには、サンプル調製も容易ではなく、どんなタンパク質でも良いというわけではないです。そのため、電子顕微鏡がフレキシブルな構造を見るのに優位であるとは思えませんが、結晶構造解析に比べると結晶化の必要がないので、過渡的な構造を捉えるのには優れています。また、膜タンパク質は結晶構造解析法では高分解能のデータを得るのが難しいので、電顕による構造解析例が増えています。
>X線よりは分解能はかなり低かったと思っているのですが、そうすると蛋白のN末やC末の数残>基のゆらぎとかは基本的に見れないかもしれませんね。
結晶構造解析に匹敵する分解能が電子顕微鏡でも可能となったというのが、今回の授賞理由です。
蛇足ですが、結晶の分解能と電顕の分解能は求め方が異なります。結晶の場合は回折分解能、電顕の場合は電子線の点分解能です。電子密度マップを見ればわかりますが、同じ分解能であっても、電子顕微鏡の方が明瞭です(これも正確には誤解があって、マップの明瞭さはデータの精度の問題もあるので、必ずしも分解能に比例するわけではありません)。
最後に独り言。構造生物学は生物・物理・化学の横断領域で、さらに専門に特化しているので難しいのはわかるのですが、YahooコメントのみならずChemStationなどのサイエンス系サイトでも説明が間違っているところがあり、大丈夫かなあと心配になります。 |
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