現在イギリスである遺伝性疾患を持つ患者さんを研究している者です。
患者さんおよびそのご家族から樹立したiPSCs, primary skin fibroblastsおよびEBV-immortalized B lymphoblastsを実験に用いています。
これらの家系ではすでにホールエクソームシークエンスは施行されており、患者さんはある遺伝子Xのホモであり、両親はXのヘテロ接合体であることが分かっています。その患者さんはXのノックアウトマウスと同じ表現型を示しています。
私のサイドプロジェクトである遺伝子Yの発現ベクターを構築するため、たまたま手元にあったその家系のお母さんのiPSC cDNAから遺伝子Yをクローニングしました。するとその遺伝子Yにミスセンス変異があり、その変異はSNP data baseに登録されておりました。地域にも依りますが、0.1-1%ほどの頻度のようでした。PCRによる変異でないとすれば、そのお母さんはYのホモのようです。ちなみにこのYのミスセンス変異はタンパク質の機能には影響しないとありました。
一方、同時に別の遺伝子Zもクローニングしており、驚いたことに遺伝子Zにもミスセンス変異が存在しており、その変異もSNP data baseに登録されておりました。かなり有名な変異らしく、論文にもいくつか解析されてました。その頻度も極めて低いようです。その変異もタンパク質の機能には影響をしていないようです。そしてそのお母さんはZのヘテロのようでした。
CDS内にもsynonymous mutationsがいくつかあり、何かおかしいんではないかと疑い始めました。両親の方は疾患は持っておらず、全くの正常です。PCRはhigh fidelity polymeraseを用いていますし、サイクル数も25程度です。確かにiPSCを培養していた際は、継代や分化に手こずり、随分時間がかかってしまった覚えがあり、長期培養してしまったことでのartificialといいますかspontaneous mutationsが導入されてしまったのではないか?と考えています。
今は繊維芽細胞や不死化B細胞のcDNAでもダブルチェックをしているところですが、素朴な疑問として、長期間培養により所謂ヒトデータベースに登録されているような”ホットスポット”に体細胞変異が培養ディッシュ内でも入ってしまうのでしょうか。。DNA damagesがあったりするんだろうかと不思議に思いながらこれからPCRを始めるところです。 |
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