「欠損(?)」とお書きになられているのは、切片に切れ目が入っていることを示すのか、それとも一部が失われていることを示すのか質問者様には分からないということでしょうか。
そうすると実際に欠損(?)した切片を同じ研究室の方に見て頂くのが一番かと思いますが、一応私がPFA固定脳を薄切する際の手順を挙げておきます。
サンプルはラット8週齢と大きめの脳です。
4% PFA/PBSで潅流固定→
4% PFA/PBSで4-5時間浸漬固定→
15% Sucrose/PBSに沈むまで4℃で浸漬(一晩かけてます)→
20% Sucrose/PBSに沈むまで4℃で浸漬(半日あれば沈みます)→
アルミホイルで 3cm四方の小さな箱を作りサンプルをOCTに沈める→
ペンタンにドライアイス入れて十分冷やし、泡が出なくなったらアルミホイルの箱を入れて凍結(OCTが直接ペンタンに触れないように)→
-80℃で保存→
サンプルをクライオスタット(-25℃)に数時間置いて温度を合わせ薄切→
脳切片を貼り付け
組織の欠損が、薄切がうまくいっていない、筆で切片を扱う際に破った、OCTを洗う際に千切れてしまった、というのでないならば凍結の過程を疑います。
切片にできる微細な切れ目は、凍結の過程で生じる氷によるものとされています。一方組織が壊れるような大きな切れ目は、組織内で凍結の進み具合に差が生じる結果、歪みの圧力が逃がせなくなって亀裂が入るのだといわれます。
上記2つに対処するため、通常サンプルを瞬時に凍結することが推奨されておりそれを裏付ける論文も多いですが、その場合の「瞬時」は本当に「瞬時」です。中途半端だと、例えば脳サンプルの外側が内側より先に凍結し、圧力の逃げ場がなくなって組織に亀裂が入るということになります。脳サンプルを液体窒素に突っ込んだり、ドライアイスの粉に埋めるとひびが入ります。
それが出来ないのであれば逆にゆっくりの方が組織を大きく壊す様な亀裂は出来にくいです。上記プロトコールは下と側面から徐々に凍結し、全体が凍結するまで20秒以上かかっています。そのため微細な氷による組織の損傷は免れませんが、組織が大きく壊れることはありません。凍結が下から上へと進行することで圧力が上に逃げるからです。
欠損の様子がわからないので的外れかもしれませんが、思いつくとしたらこんなところです。 |
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