stable lineを作るときのように薬剤耐性プラスミドをco-transfectするなどして、CRISPR/Cas9を作用させる培養期間を延長するといいと思います。探せば、公開されているそういうプロトコールも見つかると思います。
倍数体の場合、二重鎖切断(DSB)のほとんどは相同組換え(HR)修復されます。たまたまHR修復にもれたDSBが、非相同末端結合(NHEJ)などを起こしたとき欠損が残るわけです。
二倍体の場合、相同遺伝子対の両方に欠損が起こるためには、一方が欠損を起こした後に、正常な方にDSBが起こって欠損染色体を鋳型にHRが起こるか、相同対に独立したDSBと末端結合が起こって独立した欠損が起こるかです。前者のほうが優位だと考えられます。
もっと高度な倍数体の場合、ある時点で相同遺伝子のどれかひとつにDSBが起こっても、HR修復の鋳型となる相同遺伝子が複数あってチャンスも高まるので、そもそもNHEJが起こって欠損を生じる確率が下がるでしょう。また、たとえ、最初の変異が起こっても、正常で残っているコピーによるHRで正常に戻ってしまう可能性が高いので二番目、三番目、、、の変異も簡単には起こりません。ただし一度、変異を起こすとCRISPRの標的配列が崩れてDSBは起こらなくなるので、正常→欠損の一方通行ではあります。
ありうるストーリーとしては、
1. まずひとつのコピーにDSB〜NHEJによる最初の変異が入る
2. 別のコピーに生じたDSBが、運良く正常なコピーではなく変異を起こしたコピーでHR修復され、同じ変異が導入される。
3. すべてのコピーに変異が入るまで2の過程が繰り返される。
まあ、通常よりも長い期間、CRISPR/Cas9を作用させなければならないのは当然ですね。 |
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