遺伝子導入の効率は、DNA・試薬複合体の安定性と複合体と細胞の接触回数、細胞の性質が大きく影響するのはご存じの通りです。
最近の導入試薬は血清入り培地中でも複合体が安定なものが多いので、複合体は長時間存在していると考えられます。(なお正電荷脂質はアルブミン等に吸着して効果が無くなるようです。)
とはいえ、血清入り培地よりは無血清培地の方がやはり導入効率は良いです。
また、細胞の接触回数に関しては、長い時間暴露した方が多くなりますので、導入率は多くなります。
以前から、(plateの)遠心や磁気による誘引、リバースフェクション(複合体を底面において細胞を振りかける)などで強制的に複合体と細胞の接触を増やす、リガンドなどを複合体に提示させることによりエンドサイトーシスを誘導させるなどで、導入効率が上昇することも知られています。
dishをゆっくり揺らしておくと導入効率が上がることが多かった(最近の試薬は変わらないことも多い)。
同様に考えて、複合体の量を増やす・培地量を減らすなど、導入時の複合体濃度を上げることも有効でした。ただし導入効率を上げると毒性も上がる傾向もあります。
最近の試薬は導入時間が短くても効率が良いものが多いので、複合体サイズが大きく沈降しやすい=細胞に接触しやすいのかな、とも思います。ただし複合体サイズが大きくなりすぎると毒性が上がる、導入効率が下がると思いますので絶妙にコントロールされているのかなと考えています。
そのためかdishでの効率が良くても動物に投与したときの肝臓への導入効率はさほどでもない試薬もありました(EtOHに溶けている試薬だったからかもしれませんが)。
なお、上記および下記の経験は限られた種類の試薬と細胞の経験なので、参考程度に考えてください。
グダグダと述べましたが、私の経験だと
>Over nightで導入するのと同程度の効率が得られる時間とは、どの程度の印象でしょうか。
血清入り培地ならば、O/N>6時間>3時間>>1時間。
無血清培地ならO/N>=6時間>=3時間>1時間。
ただしO/Nと6時間の違いは少なく(1.2~1.5x)、無血清培地の場合、毒性の方が問題になることが多い。
培地量を減らし(例えば10mL->3.3mL)ゆっくり揺らすと、O/N=6時間>=3hr(1時間は不明)
低速遠心(5分ほど)すると1時間=6時間 (ただし細胞が剥がれることがあったので行っていない)
浮遊培養の場合、高細胞密度(1~4x10^7/mL)で導入すると1時間で十分(もっとも培地のpHが下がるので2時間が限界かな)。
導入効率がプラトーになる時間は、やはり細胞と試薬の組み合わせで変わりますね。EGFP(またb-Gal)発現ベクターで簡単に分かるので一度は調べると安心ですよ。 |
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