このキットは使ったことはないのですが、常識的な知識で分かりそうなので回答します。
このキットはある遺伝子の極々一部の配列が分かっている時に、その周辺の未知の部分をクローニングしてこよう、というものですよね。
ゲノムDNAの莫大な数の遺伝子の中から、既知の配列を含むものだけを増幅したいわけですから、それ以外のものが増幅してしまったらそれが「非特異」なものになるわけです。
カセットを使って制限酵素処理された断片を挟んでPCRする場合に、カセットの配列はどの断片でも同じなのですから、もしニックが無ければ、両端にカセットを持つ断片全てについてC1プライマーで挟まれる領域が増幅されてしまうわけで、S1プライマーとC1プライマーで増幅されたPCR産物もありますが、その膨大な「非特異」の中に埋もれてしまうわけです。ニックがあればS1プライマーとC1プライマーで挟まれた領域のみが増幅されます。
一方でS1プライマーは目的の遺伝子の目的の配列には結合するでしょうが、別の遺伝子の同じような配列にも結合するかもしれません。そうすると、S1とカセットのC1で挟まれたそのoff-targetの遺伝子の領域も増幅されてしまい、これも「非特異」となるわけです。この種の非特異を減らすために、2回めのPCRとしてS2とC2でnested PCRをするわけです。別の遺伝子がS1のみならずS2とも同じ配列を持つ可能性は極めて低いでしょうから、「非特異」は2回めのPCRでは増幅されない、ということです。 |
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