遺伝毒性をgenotoxicityの訳語として使っているなら、原意に近いのは遺伝子毒性です。
genotoxicityは遺伝子(DNA)に有害な化学的・物理的な変化や相互作用を起こす性質一般。
変異原性(mutagenicity)は、突然変異(mutation)を起こす性質のこと。遺伝子(DNA)に有害な作用をするのだから当然、mutagenicityをもつすべてのものはgenotoxicityをもつことになる。しかし、genotoxicityを持つすべてのものが、mutationを起こすことで毒性をもたらすのではないので、必ずしもmutagenicというわけではない。たとえば、インターカレーターなんかは、遅効性毒性としては突然変異誘発があるが、過剰量投与したときの急性毒性は突然変異とは無関係のメカニズムだと思う。
発がん性(carcinogenicity)は、文字通りがんを生じさせる性質。イニシエータかプロモータも含む。carcinogenicityが、mutagenicityによる遺伝子の変異(mutation)に起因することが「ほとんどな」ので、carcinogenicityの目安としてAmes testなどでmutagenicityを評価している。発がんというのはあくまで、個体の組織レベルの現象なのでcarcinogenicityを直接、評価するのが困難であるので、細菌や培養細胞などでのmutagenicityの評価で代えるというのは合理的。しかし、carcinogenが必ずしもmutagenではない(例えばアスベスト)。 |
|