基本的に、低い電圧のほうが分子量の違いが大きめに移動度に反映されるようです。
しかし、微妙なサイズの違いを見極めるときなどにはあえて低電圧で泳動したりもしますが、実用上、劇的に分離能が変わるわけではありません。同じように、切り出しで100 Vでうまく単離できなかったバンドが50 Vにしたらできる、ということはないでしょう。バンドが単離できなかった原因はそこじゃないとおもいます。
さて、泳動開始直後に一時的に高電圧、あるいは低電圧に設定することに意味があるのか、ということですが、いくつかあります。
・特にゲノムサザンの時のようにフラグメントサイズの分布が広範囲に散らばっていて、サイズごとに分離すればオーバーロードにはならないんだけれど、1レーンあたりに多めのDNAを載せなければならない場合など、
ウェルに注入された時点では、狭いゾーンに大量のDNAが存在するので、少なくとも最初のうちは低電圧でゆっくり流してやらないと、オーバーロードと同じことでテイリングがひどくなり、シャープな分離ができなくなります。
マラソン大会で、スタート直後はゆっくり集団が動き出し、先頭集団やらある程度分布がバラけてから本番の走りになる感じですかね。
・開始直後に高電圧をかけるという理由として考えられるのは、ウェルの中ではDNAが比較的自由に拡散してしまうので、早いとこゲルに浸透させないとサンプルが希釈したりバンドの拡散が起こったりするという心配からではないでしょうか。アガロースゲル電気泳動の場合はそれほど影響ないと思いますが、スラブゲル(しかもシャークトゥースコーム)でシークエンス泳動をしていたころは、かなり必要に迫られていた技でした。 |
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