費用に糸目をつけなければ、化学合成でも必要な精度、量を得ることは不可能ではないと思いますが。ただ、100 ntを超えるような長さとなると化学合成では難しくなってくると思います。
化学合成によるDNA合成は、一塩基伸ばすごとに数パーセントのエラー、つまりヌクレオチド付加の失敗による欠失が起こると言われています。仮にエラー率が1%で、99%は正しく反応が進むとしましょう。
一番目の塩基を伸張するとき、99%は正しい産物です。
二番目の塩基を伸長したとき、正しい産物は99% x 99% = 98%
三番目の塩基を伸長したとき、正しい産物は98% x 99% = 97%
・
・
・
20番目の塩基を伸長したとき、正しい産物は82%
30番目の塩基を伸長したとき、正しい産物は74%
100番目の塩基を伸長したとき、正しい産物は36%
ただのPCRをするだけなら、プライマーは長くなくていいし、多少エラーが混じっていても十分に走るので、精製はそれほど重要ではないです。
しかし、シークエンスのプライマーだと一塩基でも長さが違うと、波形がずれてしまうので、不正な産物の含有量が少ないプライマーが必要で、場合によっては鎖長で分離する精製(HPLC, PAGE)が必要です。
長い合成DNAは、全合成産物の中でエラーのない産物の割合が少なくなっているので、精度の高い鎖を精製して得ると収量が少なくなり、単価が高いものになります。 |
|