学生に実験レポートを書かせたら、「考察には何を書けばいいのですか?」という質問が多いのですけど…。
Discussionに必ず書かなければならないのは、その論文の冒頭(Introduction)で提示した命題(研究目的)に対する「結論(Conclusion)」です。多忙な読者が他人の論文をわざわざ読むのは、その研究の結論を知りたいからですよね。極論でいえば、研究の「目的」とその「結論」さえ最低限書かれていれば、わざわざ学術論文を発表してまで著者が主張しようとしている主旨は読み取れるわけです(逆にDiscussionで結論が述べられていなければその論文は無価値です)。
でもその主張(結論)がどうやって導かれたのか書かれていなければ、中立な読者は得心できるわけないですよね。ですから、Discussionでは、どういう論拠でその結論が導びかれるに至ったのか「理由」もきちんと論述せざるえないはずです。
ところがいくら論理的に結論が導かれていても、その論拠が提示されていなければ本当にその論理が正しいのか解りません。読者は当然「そこまで主張するなら証拠を見せろ」って思います。だから提示するのが実験なり観察なりの「結果」なわけです。テキストと数値だけの生データでもいいけど、読者が理解しやすいようにデータを加工して図表にしておきます。
さらに、その「結果」が妥当な実験手法で得られていることを示すために「材料と方法」を精緻に記載しておきます。データの信憑性を疑われたくなんてないですもんね。。。
というわけで、論文に必要なものを重要度の高い順、つまり「なくては成り立たないもの」から順に書くと、
@「目的」と「結論」
A結論を導く簡潔かつ明解な「論証」(=考察)
B考察の正しさを証明するために必要な”最小限の”「論拠」(=実験結果や観察結果)
C得られた結果の妥当性を示すための「材料と方法」
になると思います。
最近の論文は、Results & Discussion方式で「結果」を順に辿っていけばある程度著者の論証のストーリーラインが読み取れるので、考察で繰り返すとクドく感じてしまいがちですけどね…。
「考察」では、対立する結論を導いている他グループの学説や反証となるような結果が過去に報告されていれば、自己の結論の妥当性を客観的・公平に検討する上でそれらにも言及せざるえないはずです。だから論及しておきます。逆に自己の結論を補完したり補強する文献も引用しておきます。
一方、結論を導くのに必要のない論考や実験データは誤解を恐れずいえば「蛇足」です。だってあってもなくても「結論に影響を与えないもの」をわざわざ論文に盛り込む必要なんてまったくないんだもの。
後は、論文の付加価値を上げるためにIntroductionで「研究の背景」を書いて研究の意義や重要性を読者に説いて、ちょっぴりセンセーショナルなタイトルをつけておきます―――だってそうしないと読んでさえもらえないもの…(ぁ |
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