この1997年に発見された新種の真菌については詳しくありませんが、植物のプロバイオティクス plant probioticという概念は興味深いと思います。
分子遺伝学的な手技が確立されていないことが本菌の応用・実用化への道を阻んでいるようですが、本論文で用いている手技はすべて、参考文献にあげられている1990年にChakraborty博士がNucleic Acids Res.誌に発表された論文をベースにしているようですから、その文献をあたってください。
7.Chakraborty, B. N. and Kapoor, M. Transformation of filamentous fungi by electroporation. Nucleic Acids Res. 18, 6737. (1990)
クロレラの培養でもMAM培地という名前の培地を使用するようですが、こちらには硝酸カリウムが0.1%含まれているようですので、組成の異なる培地なのだと思います。
EBについては、エレクトロポレーション法ではコンピテント細胞に塩が残留していると過電流になってしまいますから、大腸菌などでは滅菌水で洗浄して調整します。(この真菌の場合は、滅菌水ではダメなようですが)真菌でも同様に十分に脱塩する必要があるでしょうから、大腸菌用の洗浄バッファーに準じた組成になっていると思います。
酵素液の濃度については、必ずしもユニット表記になっているプロトコールばかりではありません。
たとえば、細菌の細胞壁成分であるペプチドグリカン層を消化・除去する目的でリゾチームを用いますが、終濃度10 mg/mlとなっていたりします。
菌体の細胞壁を完全に破壊することが目的ですので、多少過剰量を添加していると思います。
本法ではコンピテント細胞の調整のための増菌培養の最後の段階でβ-glucuronidaseを添加していますが、おそらく莢膜か細胞壁にダメージを与えて胞子形成もしくは胞子の発芽を誘導することが目的でしょうから(違うかもしれませんので調べてみてください)、少ないよりは多少過剰めに入れても結果にさほど影響はないのでしょう。
初めて実施する実験プロトコールでは、各操作をなんのためにしているのか目的や意味を考えながら進めてください。基本的に大腸菌のエレクトロポレーション用コンピテント細胞の調整法をベースにアレンジされた手法だと思いますので、多少面倒でもそちらの原理から学ばれた方がよいと思います。 |
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