Histoneのウェスタンはたまにしています。あくまでも自己流で、これがいいのかどうかわりませんが、聞かれて今まで何人かの人に勧めたらいい感じデータが得られたとお礼言われたので多分それほど変なことしてないと思うので私のやってる方法を書きます。核画分、あるいはHistone画分(硫酸抽出画分)でも良いですが、Histoneは細胞内タンパク質の中でも(CBB染色でも見えるくらい)非常に量の多い蛋白質の一つですので、whole cell lysateでも問題なく余裕で検出できます。
1. 細胞、もしくは組織を直接SDS-sample buffer(0.0625M Try-HCl(pH6.7), 2%SDS, 10% Glycerol)で溶解します。(できれば一応Proteinase inhibitorも入れたほうがいいです。H3はSDS存在下でも長期保存中に一部C末側で断片化の傾向が見られたことがあるので。)液量は細胞の場合0.5-1.0ml / 10cm dish, 組織の場合 体積で10倍量 or more.
RIPA bufferだと十分抽出できないかもしれません。少なくともTritone X100やNP40など非イオン性界面活性剤主体かつisotonicなlysis bufferでは核蛋白質、とりわけHistoneの抽出は難しいです。Hypertonicなlysis bufferならば、未変性系bufferでも抽出できる可能性はあるかもしれません。Lysis bufferの詳細の公開を拒んでおられるため、その辺のことがわかりませんが、Lysis bufferの組成は直接成否に関わるところと思われます。うまくいかないと言って実験繰り返してる人のなかには、元々そこにないものを``あるはず``と思って追いかけてる人は多いです。
2. 28~29Gシリンジで粘性が無くなるまで吸引排出を繰り返す。代わりに超音波処理でも良いが必要最小限で。
3. 12000xg, 18℃前後、10min遠心し、不溶物(たぶんほとんどないけど)を除去
4.一部をとって適当に水で希釈して蛋白質定量(BCA法)。
5. 還元剤とBPBを添加して97℃、10min加熱。
6. 15% gelで電気泳動(精製したHistoneを泳動しましたが、通常のTris-glycine系でもコアヒストンのH3, H 2A ,H 2B , H4の4本のバンドは十分分離可能です。リンカーヒストン(ヒストンH1)はコアヒストンと比べてやや転写されにくい時があります。)
使わなかった泳動サンプルは−80℃保存します。凍結融解はできるだ最小限で。
7.通常の 冷却Wet式(BIORAD製)で90分PVDF膜にブロッティング(転写は普通のTris-glycine系です。bufferには最終濃度で20%MeOHおよび0.02%SDSを添加してます。SDSの添加は大事と思います)PVDFはポアサイズは普通の0.45の方でやってます。もしH4の転写がイマイチと感じたらポアサイズ0.22使うかしてもいいです。
以前セミドライでやったこともありますが、WETと比べて転写がややイマイチ(シグナルがやや弱め)な感じがしました。塩基性蛋白質なので転写されにくいということでCAPS系を推奨してる本もあり、昔やったことありますがあまりありがたみなかったです。
8. 抗体はBiolegendやABCAMのものを使用していて良好な結果を得ています
9. Deprobing/reprobingでReblottingを2回くらいしてますが、とくに膜から外れやすいとかはありません。
10. もしより細かい分離(H3.1とH3.3の分離をしたいとか)が必要の場合は、Histoneを精製して、酸性尿素ゲル/ SDS-PAGEの組み合わせによる2次元電気泳動します。古典的ですが今でも結構有用な手法です。ただ時間と手間がかかり、一度やったらしばらくはやりたくない実験です。なのでその場合はHPLCとかが良いかもしれません。 |
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