Oriciroのin vitro DNA増幅方法は、大腸菌のgenomeの複製系を丸々コピーした物で、元論文はdoi.org/10.1093/nar/gkx822です。増幅産物は、ほぼ我々が知っている環状DNA型のplasmidとして増えてくるので、増幅産物の希釈は簡単だと思いますし、再増幅も簡単に行えます。
デメリットとしては、30近い酵素群が必要であり、どれか一個でもこけていると増えない可能性があります。また、一般的なplasmidにはoriCは入っていないので、oriCを入れ且つ環状でなければ増えないので、何らかの方法で、oriCを入れ込まなければならない。逆に、oriCが無いものは増えないので、コンタミには強いです。残念ながら現状モデルナに買収されてからキットの入手は困難なようです(少なくともwebでは確認出来ない)。
これ以前のCell-free cloningとしては、phi29DNA polymeraseを利用したDNA増幅方法(multiply-primed rolling circle amplification; MPRCA, doi: 10.1101/gr.180501)で、最初の論文がdoi.org/10.1073/pnas.0508809102、type-IISの制限酵素を利用したのがdoi.org/10.1093/nar/gkn025、普通の制限酵素を利用したのがdoi.org/10.2144/000113155になります。
MPRCAを利用した場合、標的が環状DNAであれば、PCRで正しく増やせない配列や、大腸菌に毒性のある配列も増やせます。デメリットとしては、doi.org/10.1073/pnas.0508809102にも書いてありますが、標的DNAのコピー数が少ない(基本10^4以下)とBackgroundで標的と全く関係ないDNAが増えてしまうことです。また環状だけでなく直鎖状DNA(コンタミ)も量が多いと配列がめちゃくちゃになりますが増え、制限酵素による切断前は見かけ上は区別出来ませんので、取り使うときはPCR以上にコンタミに注意が必要です。また再増幅には一度切断し再環状化stepが必要です。切断しなくても、GenomiPhiで再増幅できるという報告もありますが、やったことがないので上手くいくかどうかは判らないです。
MPRCAのキットは旧GE healthcare(現cytiva)からTempliPhiが出ていますが、既に特許切れているので、NEBから出ているphi29-XT RCA Kitの方が少しお安いです。
>[Re:1] プラスミドンさんは書きました :
> 方法を変えて リガーゼで接合するのでなく、in fusionに変えてみても同様
と有りますのでIn-Fusionの替わりに、NEBuilderで連結した後で、phi29-XT RCA KitでDNAを増幅する手法も使えます(この方法はNEBuilderのHPでも紹介されています)。
いずれの増幅方法でも、反応液に投入されたdNTPsが枯渇するまで増やせますので(10 ug以上/20 uL位)、反応時間を長くすれば反応液は糸を引く感じのネチョネチョになりますが、Oriciroの方は環状DNAなので、たぶん希釈は簡単だと思いますし、丁度良い濃度でそのまま電気泳動すれば上手くいったのかどうかの確認は可能です。一方でMPRCA産物は非常に長鎖のtandem-repeat状なので、希釈は少しだけ面倒で、且つ制限酵素等で切断し電気泳動して目的DNAが増えたかどうかの確認が必要になります。 |
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