まずは、知識不足ですが基本的に学生はちゃんとした研究論文を読む量が絶対量で少なすぎです。
バイオの研究の悪いところは、何となく結論だけ聞いてわかった気になっても何とかなってしまうところで、これは基礎研究を真面目にやってない医学部の臨床系にもありがちですが、ただ表面的な結果だけでその背景にある概念や意味をちゃんと踏まえてないような研究ばかりやってるところも多いです。いわゆる銅鉄実験なんかもそれにあたりますし、大規模データーだけ金かけてとってよくわからない個別分子解析の遺伝学だけで言われればまあそうでしょうって感じはするけど結局なんのひねりもない研究も少なくありません。
ラボで輪読会などをやってるところも多いでしょうからそういうのを勉強の場にするのが本来のスタイルなのですが、実際は面倒なボスが情報収集のために論文の表面的な結果だけを下っ端に読ませて把握するだけの時間になってることも多いです。こういう形式だとアブストラクトを何となく機械翻訳にかけてそれっぽい日本語を載せれば何となく話が通ってしまうのですが、細かいニュアンスやどのような結果からそうした結論を求めてるのか、それが特に基礎研究者の思考訓練としては一番重要です。
個人的に一番良いと思うのは、まずはトップジャーナルのきちんとした体系的な論文をイントロから順に各figureで示しているデータをちゃんと自分が説明できるぐらいまで理解するように学習することです。論文は結果よりも、結果を導く過程のそのデータが実は重要です。CNSに出る論文でも個別のデータを見ると少し微妙なこともあります。自分が著者になったと仮定して、筆者らの立場で言いたい結論を出すためにでたデータをどのように説明してるか、そのデータを元に次にどのような実験を組むのか思考実験をすることです。研究者として一人前になるというのは、こうした基本思考プロセスをきちんとデータが読める研究者がどのように理解してるのか、その思考プロセスが自分の中のものといかに一致させるか、その親和性が基本になります。ダメな学生や未熟な研究者は同じデータを見ても的外れなところに注目していたり、何がポイントかちゃんと整理できません。その思考プロセスの中に、足りない知識があればその都度追加してくというスタイルも必要です。だから、まともな研究経験がない人が書いた論文の批評や新聞記事は、読む人が見ればある程わかります。
この辺りの部分は突き詰めると独学では非常に困難です。ラボで十分な機会がないならば、可能であれば、そういう輪読会に力を入れている研究科や研究所の他のラボの輪読会にゲスト参加させてもらうのもありでしょう。もちろん、所属してるボスとの関係にも一応配慮したほうがいいかもしれませんが。独学でやるなら、最近は以下のような日本語の本もでてるので、論文を読む上でどういうfigureがどういう実験によって行われるのかについてもきちんと勉強してください。
論文図表を読む作法〜はじめて出会う実験&解析法も正しく解釈!生命科学・医学論文をスラスラ読むためのFigure事典 (実験医学別冊) |
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