基本的に統計的有意差というものを勘違いなさっているように思うのですけど。。。
たとえば、A細胞を薬剤Bで刺激し、薬剤B処理群と対照群(未処理群)の遺伝子Cの転写とタンパク発現のデータを得たとします。
論理的に考えられるパターンとして、次の4通りのいずれかに収まるはずですよね?
mRNA タンパク発現
パターンA有意差なし有意差なし
パターンB有意差なし有意差あり
パターンC有意差あり有意差なし
パターンD有意差あり有意差あり
この観察結果をもとに、薬剤BがA細胞にどのような機序で影響を与えているかについて考察していくわけです。もし、薬剤B刺激後のmRNA発現が多少増加していたとしても、統計処理によって有意差なしと判定されれば、それは刺激による変化ではなく偶然のバラツキにすぎないと判断するのですよね。
あなたが@で示された例は、パターンCに相当しますから、薬剤Bは少なくとも転写促進に作用していることは濃厚で、しかし同時にタンパク合成を阻害している「可能性」等も考察されるわけです。たとえタンパク合成に有意な増加が認められないとしても、パターンAのように「薬剤Bは、A細胞に有意な影響を及ぼさない」という結論は導けないわけです。
AのP値=0.05というのは同様な実験を繰り返したとき、20回に1回は偶然(バラつきによって)そのような見かけ上、差のあるデータが得られます、ということですよね。つまり、たとえばパターンDのような結果が得られれば、「薬剤Bは、A細胞のC遺伝子発現を促進する」という結論を導くと思いますけど、その結論は5%の確率で(単なるバラつきの産物という)冤罪の可能性が残されてはいますが、95%の確率で間違っていないでしょう、という意味にすぎません。5%の誤審・冤罪のリスクを高いと思うか低いと思うかは、その結論がもたらす結果で判断するべきでしょう。たとえば、ある公判において、その鑑定結果次第で有罪が確定するような重要な精神鑑定の場合には、5%のカットオフ値ではとても十分とはいえないでしょうから。 |
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