>310さんの紹介された文献だと、incubation time=0minとなっていても
低温にしていないだけで、室温ではincubateしているようですが、
そうは書いていないと思いますが。その実験例では室温のEtOHを加えて、即遠心していると読めます。
塩としてNH4OAcを使用した例ですが、合わせてFocus vol.9-2もご覧ください。
vol 7にも同様の結果が出ていましたが、DNA濃度が十分に高い場合は(5 ug/mL すなわち5 ng/uLというかなりの低濃度まで)、事前のインキュベーションをしてもほとんど回収率は向上しません。また、氷点下でのインキュベーションは逆に回収率を下げます(低温で粘性が上がり沈殿を妨げるためだろうと言っています)。それと、これらの結果は遠心を室温でやったものです。上記の条件なら室温で遠心してもおよそ9割以上の回収率があるということですね。
以上の結果を踏まえて、Gibco/BRL(Focusを出していた)はカタログのAppendixや実験ガイドに、DNAが0.1 ug/mL以上あれば、事前のインキュベーションなしで室温で遠心すればよい、10 ng/mL以下の場合は、室温でのO/Nインキュベーションをして遠心を30分に延長するのが良いと述べていました。
Molecular Cloningには、「つい数年前までは、ドライアイスエタノールなどでインキュベートするのがならいだったが、いまでは不必要であると認識されている(DNA濃度が20 ng/mL以上なら)」ということが書かれています。この記述、第3版にそのまま引き継がれていますが、じつは89年発行の第2版にすでに載っていました。すなわちFocus 7のでた85年ころ、四半世紀も前からということになります。ただし、Molecular Cloningでは、氷温での15-30 minのインキュベーションを勧めています。しかし、Focusをはじめ、多くの実験書、キットの説明書の記述を見る限り、その効果は疑問です。 |
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