ERK経路の上流因子のTgマウスを何種類か解析した事がありますが、特に同一組織での野生型との比較でERK2の発現に差が見られた経験がありません。個人的にはERK2の蛋白発現は極めて安定している印象を持っています。もしERK2の発現増加が薬剤投与時のみ見られるのであれば、再現性をよく確認した方が良いように思います。 ただし、同一組織内でも、異なる細胞分画(たとえば未分化な幹細胞分画と終末分化した細胞分画)で、ERK1とERK2の比が大きく異なる結果が得られた経験があり、細胞の分化状態に影響を与えるような処置が施されている場合は、ERK1の発現量が変化しているかもしれません。
一方、アクチンについては、NP-40などで可溶化したサンプルを用いた場合にバラツキが見られた経験があり、polymerization (stress fiber formationなど)にかかわる表現形が見られる場合に顕著でした。 個人的には、polymerizeしたアクチンを不溶性のペレットとしてロスした結果と考えており、ERK経路の活性変化に伴い細胞形態が影響を受けるような表現形の場合は、アクチンよりもERK2の方を内部標準として使っています。(あるいはSDSバッファーで直接溶かしたサンプルを用いてアクチンで標準化しています。)
あと、リン酸化されたERKは泳動度が非リン酸化ERKより遅くなるので、リン酸化ERKを多く含むサンプルの場合、トータルERKのバンドが幅広くなります(ゲルの濃さによってはERK1/2それぞれがダブルバンドになります)。 一般にERKの抗体は質がいいため、ブロットがsaturateしてしまう事がよくあり、そのような条件下で幅広になったバンドを定量すると、定量された値が大きく出てしまいます。(分かりにくい表現ですいません。)pERKが高いサンプルでtotal ERKが高くなってしまう原因の一つとして考慮した方がいいかもしれません。
質問の趣旨とはちょっとずれましたが、テクニカルな面で最初の前提に問題がある可能性を感じたので、コメントさせて頂きました。ご参考になれば幸いです。質問そのものに対しては、他の方がおっしゃっているように、リン酸化の亢進とは断言できないけれども、ERK経路のアウトプットとしては増強している可能性が高く、表現形としては後者(pathwway output)の方がより重要と思います。 |
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