こういう実験結果ってしばしば見ますけど、そんなふうに都合のよい検定法を用いてまで無理矢理に統計的有意差を示すことに意味があるのですか?
そこまで極端に結果が別れているのであれば、治療群を、さらに有効と無効の2群に別けて考察されてみてはいかがですか?
この実験で「統計的有意差がある」ということは、つまり抗腫瘍薬投与という「実験的介入(原因)」とその後の腫瘍抑制という「現象(結果)」の間に、明確な因果関係があると認めてさしつかえない、いうことですよね
マウスの個体差や実験操作(腫瘍移植・抗腫瘍薬投与)等によって実験結果に多少のバラツキがあるとしても、基本的に”同じ背景条件”のグループに対して”同じ実験的介入”が行われれば、(効くにしろ効かないにしろ)原理的には同様な現象が観察されるはずです
にも関わらず、結果にそれほどまでに極端な相違が発生する、ということは、原理的には、
(1)元々背景条件が微妙に同じではなかったか、
(2)微妙に異なる実験的介入が行われたか、
いずれしか考えられません
このような実験者による介入的実験系においては、実験者は介入する実験操作以外のすべての条件が同一になるよう実験系をコントロール(管理)できていなければならないにもかかわらず、実験系の内部に実験者がコントロールしきれていない何らかの要因が含まれてしまっている、ということを示唆しています
つまり、結果が大きく2種類に別れた治療群は、実験操作上は「腫瘍移植」という同一の背景条件が整えられた上で、「抗腫瘍薬投与」という同一の実験的介入が行われた同一のグループであるはずなのに、実は何かの要因が決定的に異なってしまってまったく異なる別のグループになってしまっている可能性が高い、ということです
実験群内部の何らかの要因が決定的に異なってしまっていたから、まったく異なる結果が得られた、と解釈するのが自然だと思います
だとすれば、実は同一条件ではないかもしれない異なる2つのグループを1つのグループに合わせて統計処理してしまっては、かえって正しい結論(原因と結果の間の因果関係の有無)が得られなくなってしまうのではないでしょうか
とはいえ、閉じられたブラックボックスへのインプット時の些細な誤差が、大きく増幅されてアウトカムされてしまうような実験系―――つまり実験者が介入パラメータをコントロールしきれていない実験モデルは、いずれにしても再検討しなければならないでしょう
ですので、もしわたしがあなたの立場で、有意差ありと判定する都合のよい検定法があったとしても、少なくともこの実験結果から「この抗腫瘍薬は有効である」と結論するのは、わたしの科学者としての良心がとても耐えられないと思います |
|