現在、「Hisタグ融合タンパク質」を大腸菌を用いて発現させ、精製を行なっています。
HisタグはN末端に付加しております。
さらに、得た組換えタンパク質は抗体作製に使います。
そのため、Hisタグと目的タンパク質の塩基配列の間にはトロンビン切断認識部位が存在します。
発現に関しては、空ベクターと目的タンパク質をコードする遺伝子断片を持つベクターを導入した大腸菌の発現産物のSDS-PAGE結果の比較により、「目的タンパク質が発現されている」ことをチェック致しました。
また、抗His抗体を用いたウエスタンブロットによりHis-tagの有無を確認しました。
しかも、目的タンパク質は封入体として発現しており、今後の精製のために可溶化を行ないました。
可溶化は超音波による菌体破砕後の遠心沈殿物を可溶化バッファー[6M 尿素と300mM NaClを含む20mM リン酸ナトリウムバッファー(pH 7.0)]で懸濁し、これをまた超音波による処理を行なうことにより達成できております。
ですが、この後の精製で数ヶ月間困っております。
こちらにある書き込みを参考にしたりして以下の操作を行なったのですが、なかなかうまくできません。
・TALON樹脂を用いて精製。
・途中からDTT等を使用できるNiセファロース6FFを使用。
(TALONよりも特異性が下がるが、まずは樹脂に目的タンパク質の結合を考慮)
・尿素の濃度を考慮して、可溶化後のサンプルをバッファー交換し希釈。
(6M→3M, 1Mへ)
・イオン相互作用を考慮して、NaCl濃度を変動。
(0,100,200,300,400,500mM)
・Hisタグがタンパク質凝集により隠れていると考え、還元剤や界面活性剤を使用。
(1, 3, 5mM 2-メルカプトエタノールを使用。1, 3, 5mM DTTを使用。0.5% SDSを使用。また還元剤と界面活性剤を併用)
また処理を混ぜて終わりか、低温室(4℃)にて一晩穏やかに浸透しながら処理。
・10% グリセロールを使用。
(TALONマニュアルを見て、相互作用に変化が起きてくれることを期待)
・ベースとなるバッファーの変更。
(リン酸ナトリウムを使用していたところ、Trisへ変更)
・バッファー変更に応じて、さらにpHを変更。
(pH 7.0→pH 7.5, 8.0)
・低温室での精製または室温(25℃くらい)での精製
・重力流方式→バッチ方式
(バッチ方式にすることにより、樹脂と目的タンパク質の接触時間、樹脂と溶出バッファーの接触時間を長くした)
【上の項目の中でもいくつか組み合わせているものがあります】
・超音波処理を6分間行なっていましたが、これが原因かと考え、超音波時間を振り、上記の可溶化バッファー存在下で精製。
(超音波時間を0,1,2,3,4,5,6分とし、ついでに可溶化の状況をSDS-PAGEでチェック)
(これに加えて、菌体破砕物を可溶化バッファーに懸濁後、低温室にて一晩穏やかに振盪処理)
なかなかうまく行かず、半ばどうしようか迷っていると、
研究室の教授が「HisタグからGSTタグにしろ」をアドバイスをくれました。
「GSTタグはHisタグと違い、以下の項目があるから有利」
・変に凝集せず精製し易い
・トロンビン認識部位がある。
確かにpGEXベクターを見ると、トロンビン認識部位があったりしますが・・・
(まずはこのベクターを購入するところから始まります。)
実際、Hisタグを打ち止めしようかGSTタグに取り掛かろうか、どうしようか迷っています。
Hisタグタンパク質の精製に関して、もう検討する余地はないのでしょうか?
Hisが発現産物に存在するのに、ここまで色々と条件を振って、うまくいかないことがあるのでしょうか? |
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