HCT116は触ったことがありませんが、別の培養細胞株でジーンターゲティングを経験しています。
MKさんのコメントの内容とほぼ同意見です。
HCT116は相同組換え効率が高いという話を良く聞きますが、個人的には、組換え効率の値を見る限りでは(概ね1/1000以上)、他の培養細胞株と比べて数倍高い程度という印象を持っています。それでもスクリーニングの労力を考えれば非常に大きな違いですが。
培養体細胞株のノックアウトの成否は、標的遺伝子(相同組換えが起こり易い領域か否か、複数コピーか)とスクリーニングストラテジー(相同組換え体をいかに効率よく選抜・診断するか)の二つにかかっています。
後者に関しては、ベクターコンストラクトの設計と選抜方法の工夫でかなりカバーすることができます。
しかし、前者に関しては運頼みです。核型が近2倍体に維持されていても、実際には標的遺伝子が3コピー以上存在することもあれば、標的遺伝子のトポロジーやベクターとの相性の関係で、何千個何万個スクリーニングしても一つも取れないこともあります。
このリスクを勘案しても、ノックアウトを取得するメリットの方が大きければ、検討される価値はあると思います。特に、痕跡量の発現が生物機能に影響する標的遺伝子の場合にはノックダウンでは結果の解釈が難しく、機能の完全失活をもたらすノックアウトが有利です。
実際に行う場合は、可能であれば、HCT116のジーンターゲティングの実績のあるラボに細胞株の分譲を依頼することをお薦めします。
同じ細胞株でも所変われば別のサブラインですので。
案外、トライしてみたら、標的遺伝子が1コピーだけだった、なんてラッキーなこともあるかもしれません。 |
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