ご存じのようにEMSによるtransition変異は、GまたはTの水素結合で対合する部位のO(酸素)がEMSアルキル化された場合、TまたはGと対合するようになることで生じます。
しかし、EMSが起こすのはtransition型の変異だけではありません。
多くの場合、DNA修復過程のエラーで起こります。ですから、DNA修復機構や修復エラーによって変異が送るしくみを理解されると、EMSでどういうことが起こるのかが理解できると思います。
例えばEMSはO以上にNをアルキル化しやすいのですが、このように修飾された塩基は除去修復、depurinationなどの標的になります。この過程で、double strand breakも起こりうるわけで、end-joiningのときに塩基の欠失が起こったり、SOS repairのようにランダムな配列の伸長を伴ったり、ときには逆位や転座すら起こります。欠失や挿入がどのくらいの規模で起こるか、というのは一般的にdouble strand breakの修復エラーで起こる範囲ならいくらでも(頻度はともかく)起こりうるとしかいえません。 |
|