Trizma base(Tris)とTrizma HCl (Trisの塩酸塩)があります。Na2PiとNaHPiを混ぜていろいろなpHのリン酸バッファーがつくれるように、両者のストック溶液を一定の比率でまぜると任意のpHのTrisバッファーができるという利便性のためのようです。
TAEやTBE, SDS-PAGE gel running bufferなどのレシピはTrisを使いますが、間違えてTrizma HClで作るとpHが低くなります。TAEなんかだと、BPBが黄緑色に変色してしまうほどで、DNAの移動度がおかしくなります(極端に遅くなる)。
こりゃ変だと、NaOHなんかでpHを合わせると、イオン強度が高くなって(中和されて、NaClをぶち込んだのと同じ)、電流が流れすぎて過熱したりフューズが切れたりします。
似たような例で、ホルムアルデヒド変性アガロースゲル電気泳動で使うMOPSバッファーを、free-acidでなくNa塩のMOPSで作ってしまうという失敗もあります。MOPSバッファーはNaOHでpHを合わせて作りますが、MOPS-Naでは既に規定のpHより高くなり、そこで間違いに気がつけばいいですが、HClで合わせてしまうとやはりイオン強度が高くなりすぎておかしなことになります。
同僚のそういう失敗を脇で見ていたおかげで、私自身は罠にはまらずにすんでいます。 |
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