いろいろな可能性が考えられるとおもいますが、抗体のエピトープが蛋白質間相互作用でマスクされるような場所だと、上手く抗体でキャプチャーする事ができないように思います。では細胞ではなぜ免疫沈降がうまくいったのかというと、想像するに、強制発現した培養細胞の中では生理的濃度の数倍から数十倍の蛋白質Aが存在していると思いますので、もし蛋白質Aが他の蛋白質群とinteractionする場合、パートナー分子の数は生理的な状態の時と同じで限りがある訳ですから、結果として大部分の蛋白質Aはあぶれてしまいます。つまりそれらは本来のパートナーと複合体形成してないのでエピトープはマスクされていないため、抗体はこれらの分子には容易にアクセスできて、結果として沢山回収できたのではないかと思います。
インターラクトームとかを見るのが目的でなくて、たんに内在性の蛋白質Aを組織から取ってきたいというだけなら尿素とかGdnHClとかあるいはSDSかなにかで変性条件で蛋白質を抽出してから希釈して免疫沈降すると上記のような問題や、エピトープが中に隠れて天然状態では免疫沈降できないような抗体でもうまくいく事があります。
補足ですが、ずっと前に、蛋白質試料液の蛋白質濃度を細胞のときの抽出液と同じくらいまで下げてみたら免疫沈降の回収率が上がった事があります。
たとえ抗体がうまく働いても、解糖系酵素とか細胞骨格のように量の多いものは別として、転写因子などの分子生物学の人たちが興味を持つ多くの内在性の蛋白質は量的に少ないのでクマシーで検出できるほど取るのはかなり難しいと思います。 |
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