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免疫染色に使う抗体の評価 トピック削除
No.4195-TOPIC - 2007/05/11 (金) 04:24:29 - IHCWB
免疫染色で用いる抗体の評価としてはウエスタンや免疫沈降が一般的だと思います。私の場合、免染はパラフィン包埋組織で、ウエスタンや免疫沈降は培養細胞で行っています。

しかし免染ではホルマリン固定と抗原賦活化による影響が出るのに対し、通常のウエスタンや免疫沈降ではこれらの影響がありません。ウエスタンでは目的バンドより薄く目立たないバンドであった関係ない蛋白が、免染では本来の蛋白より濃く染まるかもしれません。

免染で染まった場所をLCMで取ってウエスタンすれば、良いのかもしれませんが、染まっている場所の特異性や使用蛋白の量を考えるととてもできません。

ペプチド中和もひとつの方法でしょうが、アフィニティ精製した抗体を用いたウエスタンで見られた目的のバンドおよびエクストラバンドすべてがペプチド中和で消えたこともありました。以来、私はペプチド中和での抗体特異性を言いにくくなってしまいました。

例えばホルマリン処理した細胞をEDTAで抗原賦活化の処理をして、免疫沈降しウエスタンをするようなことで免染の抗原賦活処理に近似させられないでしょうか?ただこのままだとEDTAで切れない架橋がウエスタンで見られる分子量に影響を及ぼすでしょう。電気泳動後メンブレンにトランスファーしてからホルマリン架橋反応で抗原ブロックができれば良いのでしょうが、具体的な方法が思い浮かびません。

アイデアを持っている方、似たような事をしたことがある方のお話をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
 
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参考までに 削除/引用
No.4195-6 - 2007/05/15 (火) 09:43:18 - Miso
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=AbstractPlus&list_uids=16885215&query_hl=11&itool=pubmed_docsum

(無題) 削除/引用
No.4195-5 - 2007/05/15 (火) 09:15:37 - IHCWB
ねずみさんありがとうございました。
強制発現とInsituハイブリは免染の結果をサポートするのに良い指標となることが理解できました。うちのラボでIn situ hybrydizationを行う際は転写鎖のアンチセンスRNAを認識するプローブで染まらなければ特異的と言っているのですが、どうも気持ち悪いので自分でInsituハイブリを行う際は、ノザンでプローブの検討をしてみようと思っています。

ウエスタンでエクストラバンドがでるかどうかは露光時間、つまり目的と思われるバンドの濃さで変わります。時には抗体の良し悪しより発現量が多くてできれいに見えている気がしていました。エクストラバンドの分子量から目的外の蛋白と思われる蛋白を推定しようと思ったこともありましたが、BLASTのホモロジーで引っかかってくるタンパク質はRNAやゲノム配列から推定されているものが多く、まだ推定できません。

一方免疫染色は特異的に染まれば良いと思っている方もおり、抗体濃度もウエスタンよりも高くなりがちです。また免疫賦活の試薬、方法を変えるだけで驚くほど結果が変わるので、どうにも怖くてご相談したしだいです。

これからは可能な限り多くの結果でひとつの現象を説明しようとおもいました。

ありがとうございました。

(無題) 削除/引用
No.4195-4 - 2007/05/12 (土) 13:22:28 - ねずみ
状況はだいたい理解できました。
ここでおっしゃっている、蛋白A、B、Cがどういう関係のものかにもよると思います。例えばこれらが、subtypeやsplice variantなどのように、データベース上で容易に見つけられるhomologous proteinであれば、抗体を作成する時点でできるだけクロスしないように抗原配列を選びますが、全く関連のない蛋白とのクロスはなかなか予知するのが難しいものです。(それでも抗体作成前に抗原配列をデータベースにかけて、相同性の高い他の蛋白が存在しないか慎重に調べます。)

不幸にして、得た抗体が他の蛋白とクロスしてしまう場合、おっしゃるような状況が起こりうると思います。こういう事態は究極的には除外できないので、論文ではよく、「protein A-like immunoreactivity(蛋白A“様”免疫活性)」などと、慎重な表記をすることがあります。本当に慎重になるべき時には、手間ではありますが、蛋白Aの配列上の複数の部位で抗体を作成し、同じ様な染色像を示せばそれは蛋白Aの発現だろうという結論をより説得力を持って示すことができます。しかし、そのようにして作製した抗体もそれぞれに固有の問題を抱えることが多いので、そううまくはいかないのが実情です。

あらかじめ、その抗体が蛋白A、B、Cと反応することが想定される場合、私ならば、それぞれを培養細胞に発現させ、細胞染色及びWestern blottingを行います。発現量が多いので、見逃すことはありません。もしそこで蛋白B、Cへのクロスが確認されれば、次は、組織中に蛋白A、B、CのmRNAが発現しているか否かをRT-PCRで調べます。もし蛋白Aだけでなく、B、Cも発現していれば、それらを検出してしまう可能性は否めないということになりますね。

> つまりウエスタンで見えなかったエクストラバンドが、病理組織ではホルマリンの影響で目的蛋白が架橋されたことで相対的に強まり、誤った染色像を示してしまうのではないかと心配しています。もしこの影響をウエスタンで再現できれば、目的バンドが消える事で間違いに気づくことができるのではないかと考え、質問した次第です。

もし、ホルマリン架橋が抗原配列に影響を与え、特異性が変わると考えられるのであれば、Western blottingでメンブレンにトランスファーした後にホルマリンで処理することは可能だと思います。その処理後、抗体と反応させて、蛋白Aのバンドが消え、相対的に蛋白B、Cのバンドが見えてくれば、考えていることが正しいということになります。でも、こういう状況が常に起こるとはいえないので、このテストを抗体の特異性をテストする際の一般的なルーチンに加えるのは難しいように思います。

抗体の完全な特異性を証明するのは究極的には不可能だと思っています。現時点では、(前回の投稿で述べたような)できる限りの手法を用いて状況証拠的に特異性を調べ、論文には上でも述べたように、慎重な表記をすべきだと思います。私は、抗体とはそういう危うさを持ったツールだと思っています。昔の論文は常に抗体特異性に慎重でしたが、今は慎重さに書ける論文が多いですね。これは時に恐ろしい間違いにつながる可能性を孕んでると思います。

(無題) 削除/引用
No.4195-3 - 2007/05/12 (土) 12:33:27 - IHCWB
ねずみさんありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。ただ

>投稿を拝見しましたが、EDTAでの抗原賦活化処理に関しておっしゃっていることのイメージがいまいち湧きません。

とのことですので、多分私の説明不足だと思います。ご紹介いただいた方法を例に私の妄想をご説明いたします。

仮にラボメイドのペプチドポリクローナル抗体を使った場合です。目的は過去のパラフィン包埋された病理検体で、投与薬剤に対する癌細胞の当該蛋白の発現を見ることにします。この抗体は蛋白Aに対する抗体ですが、別の蛋白B、Cもエピトープがペプチド配列中あり、この抗体と特異的に反応します。しかし発現量で蛋白Aが他の二つより多いため、蛋白Aの発現量に露光時間を合わせたウエスタンでは蛋白B、Cは検出圏外になってしまい、蛋白A特異的抗体との¥印象を与えました。In situ ハイブリの結果は感度の問題で満足に得られませんでしたが、病理組織をスライドからかきとり、RT-PCRで増幅したところ組織中にmRNAの存在は確認できました。この抗体を免染に使ったところ薬剤に対する反応は認められませんでした。実は蛋白Aのこの抗体への結合部位はホルマリン架橋の影響を受けやすく、免疫賦活にも応答しないため免疫染色で見ていたのは蛋白Bだったのですが、染色が特異的箇所に見られたため、このことに気づかず論文を雑誌に投稿しました。しかし別グループが自ら作成した抗体で全く反対の結果を出し、追試した結果自分の論文の間違いに気づいたため論文を取り下げる結果となりました。

つまりウエスタンで見えなかったエクストラバンドが、病理組織ではホルマリンの影響で目的蛋白が架橋されたことで相対的に強まり、誤った染色像を示してしまうのではないかと心配しています。もしこの影響をウエスタンで再現できれば、目的バンドが消える事で間違いに気づくことができるのではないかと考え、質問した次第です。自分の数少ない経験ではウエスタン>培養細胞染色>凍結切片染色>パラフィン包埋切片染色の順に抗体に結合できる抗原の種類は減少している気がします。もっともたまに、ウエスタンではエクストラバンドが出る抗体が、ウエスタンでシングルバンドが出る抗体と全く同じような染色像を示したのを見たことがあります。これはエクストラバンドの抗原の方がホルマリン架橋の影響を受けやすかったためなのかと推測しています。

長々と妄想を書いて申し訳ありませんが、前から気になっていたことなので書かせていただきました。何かしら、ご意見をいただければ幸いです。

(無題) 削除/引用
No.4195-2 - 2007/05/11 (金) 06:56:48 - ねずみ
投稿を拝見しましたが、EDTAでの抗原賦活化処理に関しておっしゃっていることのイメージがいまいち湧きません。

私が行っていた免疫染色で用いる抗体の評価としては、
1)抗体のアフィニティ精製後、目的蛋白を発現する遺伝子をトランスフェクションした培養細胞で染色でき、そのシグナルが目的蛋白の取るべき細胞内局在に矛盾しない。Mock-transfected cellでは染色されないことが望ましいが、目的蛋白が内在性に発現するような場合は染色されてしまうので、この点は目的蛋白により異なります。

2)動物組織をサンプルとしたWestern blottingで推定分子量の位置にバンドを検出できる。もしバンドが出なくても、内在性蛋白の組織内発現が検出限界以下だという可能性もあるので、免疫沈降もしくは、同じ抗体で作成したimmunocolumnで内在性蛋白の濃縮を行ってみて、Western blottingで推定分子量の位置にバンドを検出する。この際、推定分子量の位置以外にバンドを検出したとしても、目的蛋白のリン酸化や糖鎖付加などの理由によって出る場合があるので、一概にnon-specific signalとは決め付けられない。その場合、目的蛋白を発現させた培養細胞でWestern blottingを行い、似たようなバンドのパターンになるかを見る(Mock-transfected cellと比較する)。もちろん抗原吸収も行う。

3)ホルマリン固定組織で免疫反応を検出でき、それはすでに報告されている免疫組織染色像に矛盾しない、もしくは、in situ hybridizationによるmRNA発現分布に矛盾しない。また、免疫シグナルの細胞内分布が目的蛋白の取るべき局在に矛盾しない。もちろん抗原吸収も行う。

この3つの条件をすべてクリアすれば、最高の抗体だと思います。実際にはこれらをすべてクリアできる抗体はなかなかできませんし、目的蛋白に関する情報が少ない場合は評価が難しいこともあります。もちろん、すべてクリアしなくても、使用目的にかなうのであれば、その抗体を使って実験することができます。ちなみに私の場合は、主に脳組織を使って評価していました。

免疫染色に使う抗体の評価 削除/引用
No.4195-1 - 2007/05/11 (金) 04:24:29 - IHCWB
免疫染色で用いる抗体の評価としてはウエスタンや免疫沈降が一般的だと思います。私の場合、免染はパラフィン包埋組織で、ウエスタンや免疫沈降は培養細胞で行っています。

しかし免染ではホルマリン固定と抗原賦活化による影響が出るのに対し、通常のウエスタンや免疫沈降ではこれらの影響がありません。ウエスタンでは目的バンドより薄く目立たないバンドであった関係ない蛋白が、免染では本来の蛋白より濃く染まるかもしれません。

免染で染まった場所をLCMで取ってウエスタンすれば、良いのかもしれませんが、染まっている場所の特異性や使用蛋白の量を考えるととてもできません。

ペプチド中和もひとつの方法でしょうが、アフィニティ精製した抗体を用いたウエスタンで見られた目的のバンドおよびエクストラバンドすべてがペプチド中和で消えたこともありました。以来、私はペプチド中和での抗体特異性を言いにくくなってしまいました。

例えばホルマリン処理した細胞をEDTAで抗原賦活化の処理をして、免疫沈降しウエスタンをするようなことで免染の抗原賦活処理に近似させられないでしょうか?ただこのままだとEDTAで切れない架橋がウエスタンで見られる分子量に影響を及ぼすでしょう。電気泳動後メンブレンにトランスファーしてからホルマリン架橋反応で抗原ブロックができれば良いのでしょうが、具体的な方法が思い浮かびません。

アイデアを持っている方、似たような事をしたことがある方のお話をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

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